今回のテーマ:現役世代男性の労働力が今後どのように推移するかを考える
現役世代男性の労働力の将来を考える目的
第1回にて、日本全体の労働力人口は増加傾向にあることを確認しました。しかし、業界ごとにみると、既に深刻な人手不足に陥っている業界があることも確認しました。
人手不足の原因は、男性の現役世代の労働人口が実は大きく減少してきており、女性や高齢者がその不足分を埋めることで労働力人口全体の数の上では増加しているものの、業界によっては現役男性の減少分を女性や高齢者では埋めきれていない状況ありました。
2回、3回で女性・高齢者の増加が今後も継続するのか確認してきましたが、これまでの労働力の中心であった現役世代の男性労働力がそもそもどのように推移するのかを今回は確認していきたいと思います。
結論を言うと、現役世代の男性の労働力はこれまで以上に急激なスピードで減少することが想定されています。その影響がどの程度インパクトのあるものなのかをみていければと思います。
現役世代男性の人口減少はこれからが本番
年齢階層別の人口予測

男性人口減少の詳細を、年齢階層別にみてみましょう。男性の現役世代は1995年の4400万人をピークに減少に転じています。2030年までは5年間で約100万人づつ減少するとされています。2030年以降は減少のスピードが加速し5年間で約200万人づつ減少しています。
1995年から2025年にかけて、現役世代の男性の人口は約700万人減少し、2025年から2045年にかけての20年間で更に約700万人の現役世代男性人口が減少すると予測されています。1995年と比べると、約1400万人が減少しており、1995年対比では約32%もの人口が減少する計算です。
これに伴い、2025年まで男性高齢世代の減少で維持されてきた男性全体の人口も、現役世代人口の減少スピードが加速するため2025年以降全体としても減少に転じていきます。
本当に男性労働力人口が減少するのはこれから
この人口減少の予測を基に、将来の男性労働力人口・就業者数がどのように変化するかをシミュレーションしてみたいと思います。
まずは、2025年度以降の男性の労働力人口比率・就業率は2020年の水準が継続する前提でシミュレーションしてみます。

この前提でシミュレーションを行うと、人口の減少に応じて労働力人口・就業者数ともに急激に減少していくことになります。

このグラフにて注目すべき点は2点あるかと思います。まず1点目ですが、2020年までの男性の労働力人口・就業者数は、1990年の水準と同等か少し多い状況であったということです。第1回でみたとおり、建設業や警備の仕事など比較的男性に適正の高い職種においては、求人倍率が既にかなり高い水準にありました。

産業別の就業者の内訳の変化をみると、現役男性が減少した分を高齢労働者が埋めることである程度緩和されていたものの、それでも人手不足が深刻化している状況です。しかし、全体でみると男性の労働力人口・就業者の水準はそれでも過去と変化がない状況だったということになります。背景には、現役男性自体も情報処理などの他の成長産業の労働力が増加してきており、労働条件が相対的に低いと思われる業界に人が集まりにくくなっていることなどがあると考えられます。

2点目の注目点は、2025年以降の減少の傾向とスピードです。ほぼ5年間ごとに約100万人づつ減少し、多い時は200万人近くの労働力人口が減少し続けることになります。
高齢労働者も入れてここ30年間はほぼ同一的な水準を保てていた男性の労働力人口は2025年以降一気に減少に転じる可能性があります。労働力人口全体が減少することにより、人手不足が更に深刻になる可能性があると考えられます。
労働力人口比率は改善する可能性があるか?
では、労働力を決めるもひとつの要因である労働力人口比率が変動する可能性はないのでしょうか?
過去からの労働力人口の比率の推移についてみてみます。

現役男性については2024年で86.7%となっています。1990年が82.8%ですので、4%上昇しており、34年間で少しづつ上昇してきています。
労働力人口比率の水準を確認するために、主要先進国とも比較してみます。

こちらの資料では現役男性の労働力人口比率が最も高いのはオランダの88.3%ですが、その次は日本の86.7%となっており、その差もわずかです。現役世代の労働力人口比率は、世界的にも高い水準にあるといえます。
現役男性についていえば、労働力人口比率は過去から上昇してきているものの、そのスピードはゆったりとしてものであり、かつ世界的にも高い水準にあることから一気にこの労働力人口比率が上昇にするようなことはあまり期待しないほうがよいと考えます。
現役世代男性減少時代の経営戦略
現役世代の男性の人口減少は1995年から始まっていましたが、65歳以上の男性の労働力人口が増加したことで男性全体の労働力人口は2025年ぐらいまでは過去の水準を維持することができました。しかし2025年以降65歳以上の男性の人口増加が停止し、それに伴い65歳以上の男性の労働力人口の増加も停止するものと予想されます。
現役世代の男性の人口減少は、これまで五年間で100万人前後の減少でしたが30年以降は五年間で200万人程度の減少となり減少するスピードが加速することが予想されています。また、現役世代男性の労働力人口比率についても、現役世代においては上昇の余地はあるものの大きくなく、かつスピード感もゆったりしたものであり、急激な上昇は見込めないと考えられます。
そのため、現役世代男性の労働力人口は人口減少に伴の加速に伴い、これまで以上に確保することが難しくなることが予想されます。これは、男性全体の労働力人口の減少が加速するだけでなく、企業にとっては、これまで正社員の担い手であった現役世代の男性が減少することで、従来のように男性正社員を確保していくことは難しくなるものと考えられ、労働量の確保だけでなく企業内におけるワークフォースミックス自体についても再考を促すものになるでしょう。
ワークフォースミックスの問題としては、例えば以下のような課題と向き合う必要がでています。
①正社員数を減らし、それでも事業運営に支障がないような仕組みを作る
②女性や高齢者、外国人等から正社員を獲得していく
③男性正社員を維持する。そのため獲得に負けないように、魅力的な事業・労働環境を整備する
①の課題に取り組む場合、AIやデジタルを活用しこれまで以上に省力化に取り組む必要があります。既に工場の無人化などは進んできてはいますが、更なる無人化のためにはこれまでと異なる発想で業務や組織システムの構成を検討する必要があるかもしれません。
また②女性や高齢者、外国人を正社員化するためには、これまで男性中心でよしとされてきた長時間労働やコミュニケーションのスタイルなど働き方の抜本的な改革がなければ、正社員として定着化させることは難しいかもしれません。
そして男性社員維持するためにはそれなりにの給与や福利厚生あるいは成長環境を整えるなど、魅力的な条件を整える必要があるかもしれません。これには既存の事業自体を見直し、より生産性の高い事業へシフトしていかなければ実現することは難しいでしょう。
いずれの道を採るとしても企業として時代の流れにあわせた構造的な変革が求められると考えられます。

