人口減少時代の成長戦略⑥|外国人労働者25万人増加の現実と限界

人口減少

今回のテーマ:労働力不足という課題に対して、外国人労働力にどの程度期待できるのか

1. はじめに

日本ででは現役世代の人口は1995年から減少に転じており、深刻な労働力不足が問題となっており、前回までの内容で整理したように、今後も労働力の減少が予想されています。そこで注目されているのが、外国人労働者の活用です。外国人労働者数は年々増加しており、政府の制度改革とともにその受け入れが進んでいます。本記事では、外国人労働力の現状、制度の変遷、政府の目標とのギャップ、そして今後の展望について総合的に検討します。

2. 外国人労働力のこれまでの推移

2.1 外国人労働力の推移

まずは、外国人労働力の現状について確認していきたいと思います。以下のグラフは、過去10年間の外国人労働力の推移を示したものです。

日本の外国人労働者数は、2012年の約68万人から、2024年にはおよそ230万人へと増加し、この12年間で実に約3.4倍にまで増加しました。

特に2015年以降、増加ペースは加速しており、毎年10万人から20万人単位で外国人労働者は増えています。これは、国内の人手不足が深刻化してきており、政府が外国人材受け入れ拡大政策を推進していることが背景にあります。

かつては一部業種や技能実習に限られていた外国人の雇用も、現在では製造・介護・外食など幅広い分野に広がってきました。全労働力人口に占める割合は、3.3%にすぎませんが、地域や業種によっては外国人なしでは立ち行かない業界も珍しくなくなっており、外国人労働者は日本の労働市場において重要な役割を担うようになってきたといえます。

2.2 資格別労働力の推移

現在、日本には外国人が就労するためには在留資格が必要で、その資格は複数のものがあり、資格により従事できる仕事の内容や滞在期限などが異なっています。以下の表はその資格制度の概要をまとめたものになっています。

制度目的備考
技能実習技能移転(建前)と労働力供給(実態)制度廃止予定、育成就労制度へ移行へ
特定技能1号・2号即戦力人材の受け入れ14分野が対象、試験あり/2号は定住・家族帯同も可能
技術・人文知識・国際業務専門職(通訳・IT・設計など)大卒が主な対象、企業就職型
高度専門職(ポイント制)高度人材の永住・定着促進永住許可の優遇など
留学・資格外活動留学生のアルバイト等パートタイム就労の一部
特定活動ワーホリ、インターン等内容により多様なタイプあり

外国人労働力の増加は政府のこれらの資格制度の変更とともに増加してきました。以下のグラフは政府の定める在留資格別の外国人労働者の推移を示したものです。制度の変遷に伴い外国人労働力が増加してきていることがわかります。

2015年〜2019年:技能実習制度の拡充

2015年から2019年にかけて、技能実習制度の枠組みが見直され、対象職種の拡大や最長在留期間の延長が実施されました。
この時期には、「技能実習」の人数が大きく増加しており、制度改正が外国人労働者数に与えた影響が顕著に表れているといえます。

2019年:特定技能制度の創設

2019年には、「特定技能1号・2号」の在留資格が創設され、14分野において中長期的に外国人労働者の受け入れが開始されました。
グラフを見ると、受入の始まった2021年以降「特定技能」の人数が急増しており、制度開始直後からの利用拡大がうかがえます。

高度人材受け入れ促進政策の影響

「専門的・技術的分野(技人国等)」に該当する在留資格については、2010年代後半以降、ポイント制や優遇措置の導入により受け入れが加速しました。
この分野の人数も安定して増加しており、政府による高度外国人材戦略の成果が表れていると考えられます。

コロナ禍(2020〜2021年)

2020年から2021年にかけては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国境管理の厳格化により、一部の在留資格において停滞や減少が見られました。
特に「技能実習」や「資格外活動(留学生のアルバイト等)」にその影響が現れました。ただし、その後は回復傾向にあり、再び労働力としての受け入れが進んでいます。

2022年以降:労働力不足を背景とした制度の柔軟化

2022年以降は、深刻な労働力不足を背景に、特定技能の分野拡大や在留期限の延長、特定活動の活用強化など、制度の柔軟化が進められています。
グラフでも、「特定技能」や「特定活動」などの項目が急増しており、制度の浸透と需要の高まりが反映されていることがわかります。

過去数十年にわたり、外国人労働者の受け入れ制度は変遷を遂げてきました。従来の限定的な受け入れから、近年では技能実習制度の拡充や高度人材の受け入れ促進など、制度が緩和されることで労働力が増加してきているといえます。この政府の政策の傾向が今後どのように変化するのか、その今後の方針について次に確認してみたいと思います。

3. 日本政府の外国人労働者受入方針

外国人労働者の増加が政府の政策と大きく連動して増加してきていることを確認しました。政府は2019年以降、特定技能制度をはじめとした複数の制度を整備・拡充し、より柔軟かつ持続可能な受け入れ体制の構築を進めています。基本的な日本政府の外国人労働者受入に関するスタンスについて整理しておきたいと思います。

基本方針:「専門性重視」と「人手不足分野への対応」の両立

政府の基本スタンスは、これまでの「専門的・技術的分野に限る」という原則を維持しつつ、介護・建設・外食・農業など深刻な人手不足分野については、特定技能制度を通じて外国人を積極的に受け入れるという柔軟な方針を取っています。

ただし、依然として「移民政策は採らない」という立場は維持しており、外国人労働者の受け入れは“限定的”で“制度的”な枠組みの中で進めるということになっています。

政策の方向性:一時的から「定住・共生」型へ

政府は2023年以降、受け入れ政策のフェーズを「量の確保」から「質の確保」へと転換しつつあります。

主な動き:

  • 特定技能2号の対象分野拡大(建設・造船 → 介護・外食なども検討中)
  • 技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」へ一本化(2027年頃施行予定)
  • 支援体制の法制化:日本語教育、生活相談、職場環境整備の義務化
  • 永住・家族帯同の条件緩和に向けた議論の進行

これらの動きは、外国人を「一時的な労働者」ではなく、地域社会の一員として迎え入れる方向性を示しているといえます。もともと日本は「移民政策は取らない」という原則のもと、外国人労働者の受け入れに慎重でした。しかし、深刻な人口減少・人手不足が続く中で、単なる一時的な労働力としての受け入れでは限界が見えはじめたため、政府も「定住」「共生」への軌道修正を図りつつあります。つまり、実質的には定住を可能にする制度設計であるが、建前としては“移民政策”ではないという立場というねじれに注意する必要があります。

出典・参考資料
厚生労働省「外国人労働者の受け入れの政府方針等について」

法務省「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

内閣官房「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和4年改定)」

4. 政府目標とのギャップ

日本政府が、外国人労働力の受け入れについて、全体的な目標を掲げているものは見当たりません。在留資格別にみると、特定技能制度については受入見込みを発表していますが、それ以外については受入に関する方針は掲げているものの、特に見込み数や目標値などは定めていないようです。

下記は、2022年以降政府が力入れている特定技能に関する政府受入見込みと実際の在留者を比較したものになります。

分野(所管省庁) 受け入れ見込み(5年間最大) 実際の在留者数(2024年) 達成率
介護(厚労省)50,900人約28,000人約55%
ビルクリーニング(厚労省)20,000人約2,000人約10%
素形材・産業機械・電気電子(経産省)49,750人約100,000人※200%以上
建設(国交省)34,000人約7,000人約20%
造船・舶用工業(国交省)11,000人約3,500人約32%
自動車整備(国交省)6,500人約3,000人約46%
航空(国交省)1,300人約300人約23%
宿泊(国交省)11,200人約5,000人約45%
農業(農水省)36,500人約14,000人約38%
漁業(農水省)6,300人約2,500人約40%
飲食料品製造業(農水省)87,200人約45,000人約52%
外食業(農水省)30,500人約12,000人約39%
▶ 合計(概算) 345,150人 約222,300人 約64%

📝 出典:
・法務省「特定技能制度の現状について(2024年2月版)」
・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」
・出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の推移」
・各種報道資料および推定を含む(2024年時点の実績は概算値)

2024年時点で、特定技能制度全体の受け入れ目標(約34万人)に対し、実際の在留者数は約22万人と、約64%にとどまっています
この未達成の背景には、以下のような構造的・制度的な課題があるといわれています。

課題分類 課題の概要
制度の複雑さ 各分野ごとに試験・手続きが異なり、企業側の事務負担が大きい。特に中小企業での対応が困難。
海外での人材確保 送り出し国での人材育成が追いつかず、受入れニーズとのギャップが発生。
コロナ禍による停止 2020〜2021年の入国制限で計画が大幅に遅延、一部分野は停止状態に。
生活・地域支援の不足 地方部では住環境や生活相談体制が未整備で、定着が困難。
情報の非対称性 外国人向け制度情報の発信が不十分で、制度の魅力が伝わっていない。

また、業界別にも達成率に差があります。

🟢 達成率が高い分野の特徴
(製造業・介護・飲食料品など)
🚧 達成率が低い分野の特徴
(ビルクリーニング・建設・航空など)
✅ 制度との親和性が高い
技能実習からスムーズに移行しやすい(例:製造業・介護)
⚠️ 制度的ハードルが高い
特定技能試験の実施回数・実施国が限られ、アクセスが難しい
✅ 企業数・雇用規模が大きい
大手・中堅企業が多く、受け入れ体制が整っている
⚠️ 就業環境の魅力に課題
長時間労働、低賃金、地方勤務などが不人気要因
✅ 試験・支援制度が整備されている
特に介護分野では、介護福祉士の育成制度が整っている
⚠️ 職種が限定的・専門性が高い
航空や整備などは高い日本語力や技術力が求められる

これらのことから、政府な柔軟かつ積極的に労働力不足解消に向けて外国人労働者を受け入れているものの、政府の目標にはまだ到達していないことがわかります。政府の方針が一時的な労働力の補填から、定住を可能にする制度の導入も視野に入れいてるのは、このような目標達成が未達である点なども背景にあるものと考えられます。

これらのことから、近年外国人労働力は増加傾向にありますが、これ以上の増加に向けては今の制度の単純な延長にはないこともうかがえます。政府は定住を可能にする制度への変更へと向かおうとしていますが、実際に外国人労働力を受けいれ定住していける環境自体を作るのは我々自身です。自治体や企業、地域社会などを通じて外国人労働者と共生していけるような環境に我々一人一人の意識や行動が変化していかなければならないものと考えます。

5. 今後のシミュレーション

今後の日本では、労働力人口の減少が避けられないと見込まれています。こうした中、現在続いている外国人労働力の増加傾向がどの程度まで維持され、全体の労働力減少に対してどれほどの補填効果を発揮できるのかが注目されています。

実際、2023年から2024年の1年間で、外国人労働者数は約25万人増加しました。仮にこのペースで増加が続いた場合、単純計算で5年間で100万人程度の外国人労働力の増加が見込まれます。

第5回のシミュレーションでも示した通り、労働力人口比率が今後も変わらないと仮定した場合、2025年以降、少なくとも5年間で140万人、多ければ300万人近い労働力の減少が予測されています。したがって、外国人労働力が5年間で100万人増加すれば、この減少分を大きく緩和する力を持つことは明らかです。

とはいえ、日本政府がどこまで外国人労働力の受け入れを進めるかは、単なる労働力不足の解消だけでなく、社会保障制度・地域社会の活性化・多文化共生といった多面的な課題とのバランスを見極めながら進める必要があります。仮に今後5年間で100万人規模の増加が実現した場合、将来的には日本人口に占める外国人の割合も大きくなり、その社会的受容や制度設計は日本にとって大きな転換点となる可能性があります。

また、安価な外国人労働力を大量に受け入れることは、2025年以降本格化してきた賃上げの流れに水を差す可能性もあります。企業からすると人件費を下げることは利益創出の観点からは望ましいことかもしれませんが、日本経済全体でみればこれにより実質賃金の上昇が抑制されるようなことになれば、過去の30年の失敗を繰り替えすことにもつながりかねません。

当面の方針としては、日本政府は外国人労働力の受け入れに対して比較的柔軟な姿勢を見せており、今後もその傾向は継続すると考えられます。したがって、外国人にとって働きやすい職場環境を整備できる企業・組織こそが、深刻な人手不足に対する現実的な対応力を持つ存在となっていくでしょう。

6. 結論

外国人労働力は、急激な労働力人口の減少に対する一つの解決策として期待されており、年々増加傾向にあります。ただし、今後どこまで増加するのかは、制度や受入体制、労働環境の整備など、解決すべき課題も多く残されており、明確な予測は難しいものになっています。また、外国人労働者を安価な賃金で受け入れるようなことになれば、日本全体の賃金上昇の流れに水を差す可能性もありますし、非正規雇用と同じ様な活用の仕方では企業自体の生産性上昇にも足かせとなる可能性があります。

ただ、現に人手不足に苦しむ企業や組織にとっては現時点でも貴重な戦力になっていることも事実で、今後はその重要性は一層増していく可能性があります。企業や組織が存続していくためには、外国人労働者を自社の貴重な戦力として活用しているけるかどうかが一つの大きな課題になっていくのは間違いなく、うまく活用できる企業・組織に人が集まり、存続していけるものと考えられます。

国や地方自治体における受入環境の整理に期待するだけでなく、自社においてより差別化された外国人労働者を有力な戦力として活用するための受入環境の整備を進めていく必要が今後ますます必要になると考えます。

次回 人口減少時代の成長戦略⑦

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