人口減少時代の成長戦略⑤|労働力人口シミュレーションと人手不足への影響

人口減少

今回のテーマ:人口減少のシミュレーション結果を踏まえ、今後の労働力の供給に与える影響や課題について考える

はじめに

これまで労働力人口について、女性高齢者男性と個別に、過去の推移を整理し、その傾向や要因を分析するとともに、今後どの程度の増加が見込めるのかといった将来予測などを行ってきました。

今回はこれらの分析を振り返りながら、人口減少が今後労働力の供給に対してどれぐらいのインパクトを与えることになるのか改めて整理したいと思います。また、それによって発生する課題はどのようなものであるのか、どのような備えが必要になるのかといったことについて考えていきます。

現状、労働力は足りているのか

これまでは女性・高齢者の労働者が増加したことで、人口減少の労働力への影響は緩和されてきたが、既に人手不足の状態

第1回で確認したように、現役世代人口(15歳~64歳)は、1995年の8,726万人をピークに減少に転じており、2022年時点で7,420万人と、1,300万人余り減少しています。現役世代の人口が減少しているため、労働力も減少しているのかと思いきや、女性や高齢者の労働参画によって労働力人口は増加してきており、1995年対比で260万人ほど増加しています。

しかし、現時点で労働市場における需給バランスをみると、需要はひっ迫している状況です。完全失業率は2013年以降3%以下と完全雇用状態が継続し、有効求人倍率は2013年以降1倍を超えています。

女性や高齢者の労働参画によって労働力人口は増加してきましたが、現時点で既に労働力が不足している状況といえます。

女性や高齢者の増加が今後も続くのか

ではこれまでのように女性や高齢者のかたの労働力人口が増加することで、この人手不足を緩和していける可能性はあるのでしょうか。

答えは、これまで個別の分析でも見てきましたが、これまでと同じ様なペースでは増加しないと考えられます。

1995年をピークに現役世代の人口は減少していますが、現役世代と高齢世代を合計した人口はほぼ横ばいの状態が続いてきました。しかし、合計した人口も2025年以降は減少に転じてしまいます。高齢世代も入れた働き手の候補となる人口の全体量これから本格的に減少するということになります。

労働力人口比率が現状と変化しないと仮定してシミュレーションした場合(図5-1)2025年以降5年毎に150万人以上、多い時では370万人近くの労働力人口が減少すると推計されます。労働力人口比率が今後変化しない場合、これまで以上に労働力の確保が課題になるものと想定されます。

ではもう一つの要因である労働力人口比率は改善する場合についてもシミュレーションしてみたいと思います。労働力人口比率は、個別の分析の際にみみてきた通り、大幅ではないですが改善する余地がないわけではないです。

現役世代の女性については近年労働力人口比率は高まってきていますが、北欧などとの差はまだ10ポイントほどありました。高齢者については、今後後期高齢者が増加するという要因がありますが、単身者が増えることで働かざるを得ない人も増える可能性があります。

世界的にみても、高齢者の労働力人口比率は高い水準にありますが、最も高い韓国と比較するとまだ差がありました。そのあたりが、世界最高水準まで仮定したとしてシミューションしてみます。

シミュレーション1:現役女性の労働力人口比率が2030年以降、北欧なみに改善

シミュレーション2:シミュレーション1に加えて、高齢者の労働力人口の比率が5年毎に1%づつ改善(最大値 男性48%、女性29%)

シミュレーション3:シミュレーション1に加えて、高齢者の労働力人口の比率が5年毎に3%づつ改善(最大値 男性48%、女性29%)

シミュレーション1は現役女性の労働力人口比率が改善し、2030年には北欧並みの水準に改善する前提にしたものになります。この場合、現在の比率が継続する場合と比較して150万人~200万人弱の労働力人口が増加すると試算できます。しかし、北欧並みの水準にしていくためには、更に女性の働きやすい環境づくりなどこれまで以上の努力が求めれることも念頭に置く必要があるかと思います。

シミュレーション2以降はシミュレーション1に加えて、65歳以上の高齢者の労働力人口比率が改善し、最終的には世界的に最も労働力人口比率の高い韓国並みに至る場合を試算しています。シミュレーション2は5年毎に1%づつ改善し、シミュレーション3は3%づつ改善がなされる前提で試算しています。

この場合はシミュレーション1と比較して、年間で200万人~500万人ほど労働力人口比率が増加することが試算できます。しかし、労働力人口比率が比較低い後期高齢者がこれから増加することを考えると、韓国並みの労働力人口比率に至るということは簡単なことではないことをこちらも念頭に置いておく必要があります。

いずれのケースにしても現在の労働力人口を維持することは難しく、遅くても2030年以降にはこれまでと異なって労働力人口が減少していくことは避けられないということになります。現役世代の減少をカバーするだけの女性や高齢者の労働力の供給は期待できないということです。

労働力人口比率に変化ない場合2025年以降労働力人口は減少に向かうことを考えれば、比率があがることでその時期が遅れるというのは大きな影響ですが、いずれにせよ今後は労働力の絶対数の減少が必ず訪れるといういことをしっかりと認識しておく必要があるかと思います。

次回に向けて

■ 労働力人口減少の影響を考える

日本では1995年をピークに、現役世代人口(15~64歳)が減少し続けており、2022年には約1,300万人の減少となっています。しかしこれまで、女性や高齢者の労働参加が進んだことで、労働力人口そのものは一定の増加を見せてきました。

一方で、完全雇用に近い状態が続く中、すでに人手不足は深刻化しています。さらに2025年以降は、高齢世代を含めた「働き手候補の総数」も減少に転じる見込みです。女性や高齢者の労働力人口比率を改善できたとしても、労働力の絶対数を維持することは難しく、本格的な労働力不足の進行は避けられないと考えられます。

この労働力人口の減少はどこまでどのような影響を及ぼすのでしょうか。その影響については次回以降詳細な検討を加えていきたいと思いますが、その前に一つ外国人労働力の与える影響についてまず先に確認しておきたいと思います。

■ 外国人労働力にどこまで期待できるのか

日本人の労働力人口は大幅に減少し、労働力不足が深刻化する可能性があることが理解できました。労働力不足を補う上での一つの有力な候補として、外国人労働力を受け入れ働いてもらうということがあるかと思います。かつて非常に限定的であった外国人労働力の受入は深刻な人手不足も踏まえ、近年緩和傾向にあります。その外国人労働力にどの程度期待することができるのか、次回検討してみたいと思います。

次回 人口減少時代の成長戦略⑥|外国人労働者25万人増加の現実と限界

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